外務省「検証結果」に対する声明(2012年12月26日)
内閣総理大臣 安倍 晋三 殿
参議院議長 平田 健二 殿
衆議院議長 伊吹 文明 殿
外務大臣 岸田 文雄 殿
外務省「対イラク武力行使に関する我が国の対応(検証結果)」に対する緊急声明
―情報開示と政府による検証を求める
先週 12 月 21 日、外務省は「対イラク武力行使に関する我が国の対応(検証結果)」として、2003 年 3 月に開戦したイラク戦争への、同省としての対応を検証したと公表した。一部報道では、「分厚い」報 告書がまとめられたと報じられているが、公開されたのは、わずか4ページの要旨のみであった。これ をもって日本のイラク戦争への対応が検証されたとはとても言えない。私たち市民団体と NGO は、以下 の二点を求める。
1. 外務省の「検証」報告書の全文を公開すること
2. 外務省のみならず政府および国会における独立した第三者の検証委員会により検証が行なわれる こと
1.報告書の公開に関して 今回の「検証」報告書について、外務省は外交的配慮を理由に公開しないとしている。だが、日本に先駆けてイラク戦争への対応を検証したオランダでは、「国連決議 1441 に基づくイラク攻撃は国際法違反」「オランダ政府のイラク戦争支持は誤り」として 550 ページにわたる報告書が 2010 年 1 月にまとめられ、公開されている。
2009 年 7 月から検証が開始され、来年中には最終報告がまとめられると見られ るイギリスにおいても、独立した検証委員会がトニー・ブレア元首相を筆頭に当時の政府関係者への聴取や政府文書の開示を行い、それらは検証委員会のウェブサイトで公開されている。
これらの先例にくらべ、今回の外務省の「検証」はあまりに閉鎖的であり、客観的な批判に耐えうるものとは言えない。 そうした閉鎖性こそ、「イラクが大量破壊兵器所有している」という誤った情報を開戦にいたるまで主張し続けることとなった原因のひとつである。報告書を公開し、一般(市民)からも広く意見を求めるべ きである。
2.第三者の検証に関して 私たちは、今回の外務省の「検証」が、日本におけるイラク戦争検証の幕引きとされることを強く憂慮する。オランダやイギリスの検証は、政府の指示の下に、独立した検証委員会が、イラク戦争と自国の関与について多角的に検証しているものである。それに対し、今回の外務省の「検証」は、同省がイ ラクの大量破壊兵器に関する情報について、誤った情報しか持ち得なかったことを認めたにすぎない。 私たちは、政府と国会に対し、改めて以下のことを求める。
1)独立の「第三者検証委員会」を政府および国会のもとに設け、「イラク戦争支持の政府判断の是非」 「自衛隊イラク派遣の判断の是非」「政府のイラク復興支援の適否」の 3 点を検証すること。同委員会が 上記 3 点についての情報開示や調査を行い、個人も含めた道義的・法的な責任の所在を明らかにするこ と。
2)「第三者検証委員会」による検証のプロセス、最終報告などが最大限公開され、誰にでもアクセスで きるようにすること。
3)「第三者検証委員会」による最終報告を受けたうえで、日本政府としての見解を国内外に発表すると ともに、必要とされる人道支援、被害者支援を行うこと。
イラク戦争の検証を行うことは、第 166 回国会で内閣提出の法案第 89 号(イラクにおける人道復興支 援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法の一部を改正する法律案)可決の際の附帯決議 で定められた国会の意思である。政府及び国会は、早期かつ内外の評価に充分耐えうる内容をもったイ ラク戦争の検証の実現に尽力すべきである。
2012年12月26日
イラク戦争の検証を求めるネットワーク
(特活)日本イラク医療支援ネットワーク(JIM-NET)
(特活)日本国際ボランティアセンター(JVC)
ピースボート
非戦を選ぶ演劇人の会
WORLD PEACE NOW
声明のPDFはこちら
メモ:
【署名提出】
2011年9月、当ネットワークは独立検証委員会によるイラク戦争検証の実現を求める署名4万1433筆を、首相官邸に提出しました。
【イラク特措法の延長に伴う附帯決議】
第166回国会閣法第89号(イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法の一部を改正する法律案)の附帯決議 「政府は、イラク戦争開戦時にあるとされた大量破壊兵器が発見されなかったことを踏まえ、その上でイラク戦争を支持した当時の政府判断について検証を行うと共に、今後十分な情報収集・分析体制の強化に努めること」